白内障手術
右上図が眼球の断面図です。水晶体は矢印のところで、 この部位の透明性の変化のことを白内障といいます。
通常は、加齢性の変化ですが、生まれつきの先天性白内障、 病的な白内障、打撲などの外傷による白内障など、様々な原因で濁りが生じることがわかっています。
左が透明水晶体、右が加齢変化をうけた水晶体。経年変化により、水晶体の内部の細胞は増加し、透明性は失われていく。
白内障眼内レンズ挿入術では、濁った水晶体を取り除き、その代わりとなる眼内レンズを同部位に 挿入する手技です。
白内障になった場合の患者さんの見え方について説明します。
下記の左側の図が正常な人の眼に入ってくる光の道筋です。通常、白内障などがなければ、網膜上の一点に光は集光し、ピントがあいます。しかし、右の図のように、白内障が存在してくると、光は網膜上にうまく集光できず、ピントが合わないような状態となります。
正常では、上記のようにしっかりとピントが合いますが…
白内障では、上記のようにピントが合いにくくなり、またぼやけて見えたりします。
また、白内障は、上記のように見えにくくなるだけではなく、濁りの進行の過程で、近視化が進行したり、光がまぶしく見えたり(夜間の対向車のヘッドライトがまぶしい、昼間サングラスがないとまぶしくて眼を開けてられない)などの他の症状も示す場合があります。
中高年の方で、最近眼鏡の度数が進行している・・・という場合、眼鏡を変える前に、一度白内障の検査をしたほうが良いことがあります。
白内障手術の手術方法について、わかりやすく説明していきます。
白内障になって濁る部分は、水晶体の部分です。この濁りを取り除き、変わりに眼内レンズをいれますが、眼内レンズを眼内に挿入し、支えておくために、水晶体を取り囲んでいる袋を残し、中身の濁りのみを超音波を利用しながら砕き、吸引除去していきます。そして、残りの水晶体の袋の中に眼内レンズを挿入し、支えとする方法が、現在の標準の方法です。
まずは手術の切開創を作成。 水晶体の袋に円形の切開を作成し、中身の濁りを除去。
最後に眼内レンズを挿入して終了。
※手術後の見え方は挿入する眼内レンズの種類によって大きく変わっていきます。
患者さんがどのように見えたいか、で挿入するレンズが変わっていきます。
眼内レンズの説明は「単焦点」「多焦点」のページにてご確認ください。
単焦点での一般的な白内障手術について
単焦点であることから焦点(ピント)が合う距離が1点になります。
焦点の合わない距離については、眼鏡が必要になります。例えば、遠方を重視した眼内レンズ(運転など遠方を重視した場合)を眼内に挿入すると、近方はピントが合わないため老眼鏡が必要になります(携帯を見たり本を読んだりする際に眼鏡が必要)。また、近方を重視した眼内レンズ(読書や携帯の距離を裸眼で見えるようにした場合)を眼内に挿入すると遠方はピントが合わないため眼鏡が必要になります(運転などでは眼鏡が必要)。
そうしたことからも、これまで行われてきた通常の白内障手術で使用する単焦点眼内レンズでは、ほとんどの症例で眼鏡を必要としました。
実際にどのように見えるのか・・・以下、そのサンプルです。
遠くのピントのレンズを入れた場合。 手元用のピントのレンズを入れた場合。
上記からわかりますように、眼内にいれたレンズの度数(どの位置を見やすくしたいか、つまりどの位置(距離)にピントを合わすか)で裸眼で見やすい距離が変わってきます。
また、見えにくい距離については、手術後に眼鏡で補正すれば見えるようになります。
手術費用
健康保険の負担率 | 片眼費用 | 両眼費用 |
---|---|---|
1割負担の方 | 約20,000円 | 約40,000円 |
2割負担の方 | 約40,000円 | 約80,000円 |
3割負担の方 | 約60,000円 | 約120,000円 |
※費用は個人差がありますので、目安としてお考えください。
※診療報酬点数の改定に伴い、大幅に変わることがあります。
手術(手術中・手術後)に際しての合併症などの注意事項
後囊破囊
眼内レンズを支える袋(囊)が何らかの原因で手術中に破けてしまうことがあります。袋(囊)が破れた場合、その程度によっては多焦点眼内レンズを挿入することができないときがあります。多焦点眼内レンズが挿入できない場合、従来の単焦点眼内レンズへ変更する場合があります。
手術後の屈折のずれ
眼内レンズの種類や度数は、手術前に様々な検査機器で測定したデータから算出された手術後の予測値をもとに、患者さんの希望の見え方や生活スタイルに合わせたレンズ度数と多焦点眼内レンズの種類を決定していきますが、まれに手術前の予測値と狙いの屈折度数がずれる場合があります。ずれ幅が小さい場合で、日常生活に支障がなければそのまま経過観察となりますが、大幅にずれが生じた場合は眼内レンズを入れ替える手術が必要になります。
ハローやグレア、コントラスト低下
多焦点眼内レンズを挿入した場合に起こりやすい症状として、ハローやグレアと呼ばれるものがあります。夜間などの暗いところで、光がにじんだり光の周囲がぼやけて見えたりする症状です。また、コントラストの低下という、色調の微妙な低下も生じることがあります。しかし、手術後徐々にその見え方に慣れてきて、ほとんどの場合、自覚症状が軽減します。
原因不明の視機能低下
術後経過も良好で様々な検査や診察で異常所見がなくても、ぼやけたりかすんでみえたりする、原因不明の視機能低下があります。Waxy visionと呼ばれるもので、多焦点眼内レンズの構造が原因とする報告もありますが、未だはっきりとした原因がわかっていません。場合によっては多焦点眼内レンズを摘出して、通常の単焦点眼内レンズに入れ替える場合があります。